2012 年の FIT 制度施行以降、日本国内では数多くの太陽光発電所が建設・連系されてきました。初期に稼働を開始したプロジェクトは 20 年間の固定買取期間を順次満了し、卒 FIT による市場運用フェーズへと全面的に移行しています。補助による収益保証がなくなり、発電所の売上は市場価格に直接左右されるようになった現在、既存資産の発電潜在能力を最大限に引き出し、運用保守コストを抑制することが発電所保有者の最重要課題となっており、既存発電所の点検や資産改修に関する業務も急速に拡大しています。
十数年にわたる屋外での長期稼働により、太陽光システム全体には経年劣化による様々な損耗が徐々に生じます。多くの性能低下は緩やかに進行するため明確な故障アラームを発報せず、遠隔監視プラットフォームの集計データだけでは完全に把握することが困難です。監視画面に表示される数値はシステム内部の演算により平滑化処理されており、季節的な気温差、雲による局所的な日陰、アレイの不整合、モジュール表面の粉塵堆積など、現場環境がもたらす変動を十分に反映できていないケースが少なくありません。そのため潜在的な資産の損失が見落とされやすくなります。

太陽光発電所の実際の出力水準を客観的に評価し、システム PR 値を算出するためには、発電量データ、日射量データ、モジュール温度データを同一タイムスタンプで同期取得することが重要な技術的前提となります。電力計測と気象環境モニタリングを個別に実施し、手作業で記録時間を合わせる手法では、時間のズレによって大きな算出誤差が生じ、出力された評価結果は第三者公正評価の報告書として採用されにくくなります。
また既存発電所で現場性能調査を実施する際には、発電停止に伴う各種コストも考慮しなければなりません。実験室向けの標準的な評価手法は精度に優れる一方、回路の切断作業を伴うため評価期間中は発電所を停止させる必要があります。メガソーラークラスの大規模発電所の場合、停止による売電収入の損失だけでなく、社内手続きや電力会社との調整業務も発生し、総合的なコストの高さから、発電所全体を対象とした定例的な性能調査の実施が難しい状況にあります。

こうした背景から、発電所の通常運転を妨げることなく複数ポイントのデータを収集し、電気的な運転データと現場の日射・温度といった気象条件を同期させ、実環境下におけるシステムの真の出力状況を再現する業務ニーズが高まっています。
卒 FIT 時代における太陽光資産の価値は、建設当初の紙面上の設計パラメーターだけで決まるのではなく、長年稼働した後の現場での実際の発電実績に大きく依存します。O&M 事業者、第三者評価機関、資産保有者は、屋外発電所の過酷な現場環境に適合した評価手法を活用し、緩やかに進行する性能損耗を早期に把握することが、既存太陽光資産の長期的な収益を守る上で重要なポイントとなります。